新型コロナウイルス感染症の治療薬と期待されていた、抗寄生虫薬「イベルメクチン」について、第Ⅲ相臨床試験を行ってきた、興和株式会社は9月22日に「主要評価項目において、統計的有意差が認められなかった」というプレスリリースを発表した。
臨床試験は軽症の新型コロナウイルス感染症患者1,030例を対象として実施した。オミクロン株が主流と考えられる今回の対象患者においては、イベルメクチンおよびプラセボともに投与開始4日前後で症状の軽症化したが、イベルメクチンの有効性を見出すことができなかったという。なお、安全性は認められたという。興和は「引き続き、細部に渡り様々な角度から本試験結果のデータ解析を進め、本剤の可能性についてさらに確認してまいります」としているが、「新型コロナの治療薬としての承認申請を断念する」としています。
イベルメクチンは、新型コロナウイルス感染症の画期的な治療薬として注目されていたが、その有効性については世界中で様々な議論があった。
イベルメクチン…2015 年にノーベル生理学・医学賞を受賞した大村智北里大学特別栄誉教授らが発見した、マクロライド系抗生物質。1987 年にフランスでオンコセルカ症の治療薬として初めて認可され、その後、リンパ系フィラリア症、糞線虫症および疥癬の治療薬としても使われている。オンコセルカ症やリンパ系フィラリア症などの寄生虫感染症薬として、アフリカを中心に2020年には4億人余りが投与を受けている。
興和株式会社 プレスリリース「興和/新型コロナウイルス感染症患者を対象とした「K-237」(イベルメクチン)の第Ⅲ相臨床試験結果に関するお知らせ」
https://www.kowa.co.jp/news/2022/press220926.pdf (最終アクセス 2022 年 9 月 28日)