進歩する放射線治療、脳腫瘍治療向上に期待、「ZAP-X」国内初導入

多くの人ががんになる時代です。がんになっても人生の通過点として、できるだけ体に負担をかけない治療が望まれています。現時点での医療では、多くのがんにおいてもし手術が可能であれば手術が有効です。ただ、脳腫瘍は患部が脳だけに場所によっては取り切れない症例も多くあります。

放射線治療の利点と課題

放射線治療は手術・薬物療法と共に三大治療法の一つ

利点はズバリ、開頭せずに治療できることでしょう。ただしメスと違って、患部にだけ放射線を当て、その周辺の組織への影響を避けるために、「定位的」放射線照射が必要となります。
乳がんや肺がん、消化管のがんでの薬物治療が劇的に進歩しており、これらのがんが脳へ転移した場合の、ピンポイント照射治療は大きな意義があります。

「開頭せずに治す」定位放射線治療装置 ZAP-Xとは?

栃木県の「宇都宮脳脊髄センター シンフォニー病院」で、日本初導入となった最新の放射線治療機器「ZAP(ザップ)-X」での治療が、2022年3月一例目が成功しました。

これまでも、できるだけ患部に集中して放射線を当てる機械が開発されてきました。
ガンマナイフ(第1世代)、サイバーナイフ(第2世代)の定位放射線機器と比べて、以下の点が有利と言われています。

1)非侵襲的なソフトマスクで頭と顔面を覆って固定する。ガンマナイフのように頭蓋へのピン刺入、フレーム固定などを要さずに、精度を維持しています。
2)治療中の位置補正装置があること。からだの位置のズレをリアルタイムで計測し補正します。誤差1㎜以下。
3)分割照射ができること:ズレ補正によって、一回照射だけでなく、数回、数十回にわたって反復して同じ場所に照射治療(分割照射)ができます。これにより大きな腫瘍などを治療することが可能になりました。
4)リアルタイム透過線量モニター:からだを透過するビームをリアルタイムに、装置内の線量計がモニターし計画との差が発生すると直ちに停止します。
5)X線線源としてリニアック(直線加速器)を利用しているため、コバルト線源の減衰がなく、治療時間が延長することがありません。

より小さいスペースで設置可能に

この機器の利点は、放射線を外部に漏らさないよう鋼鉄や鉛、タングステン合金の組み合わせで作られており、今までの放射線治療の機器より小さいスペースで設置が可能になったということです。科学の進歩がダイレクトに医療の進歩につながっていくことを今後も期待しています。

■参考文献 宇都宮脳脊髄センター シンフォニー病院 HP
https://symphony-clinic.com/about-zap-x/ (最終アクセス2022年11月07日)

■画像 『奇跡の放射線治療 ―脳腫瘍・頭頸部癌・肺癌・乳癌・食道癌・肝細胞癌・膵臓癌・前立腺癌・子宮頸癌・悪性リンパ腫 ほか (希望の最新医療シリーズ) 』桜の花出版 より

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