- 2022-7-12
- 医療ニュース
東京医科歯科大学で、世界初、オルガノイド(=ミニ臓器)を潰瘍性大腸炎患者に移植したと7月7日発表しました。オルガノイド(=ミニ臓器)を使った再生医療として世界初の試みです。
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができ、腹痛や血便を伴う下痢を起こす原因不明の病気です。病変は直腸から連続的に、そして上行性(口側)に広がる性質があり、最大で直腸から結腸全体に拡がります。症状が重い場合には、入院や大腸全摘術が必要になることもあります。厚生労働省の難病対策における「指定難病」の一つです。
日本には22万人以上の患者がいると推計されています。病状を長く良い状態(寛解)に保つためには症状や炎症だけでなく、炎症によって傷んだ腸の粘膜上皮を修復再生すること(粘膜治癒)を達成することが重要です。しかしながら、さまざまな治療を行なっても腸の修復再生が滞る難治性潰瘍のため粘膜治癒を達成できない潰瘍性大腸炎の患者さんに対し、組織再生を促す治療の選択肢は全く存在しませんでした。安倍首相はこの病気の症状悪化により2007年9月、第1次政権の任期途中で辞任し、2020年8月にも、第2次政権でも志半ばで2度目の辞任に追い込まれました。
アメリカでは便移植も選択肢に
今まで根治する有効な治療法がなく、アメリカでは、健康な人の便を移植することも選択肢の一つとなっていました。日本でも数年前から試みられていましたが、他人の便を移植することは、いくら健康な人とはいえ、今はまだわかっていない弊害も懸念され、日本では広がっていませんでした。
患者さん自身から採取した組織を培養
今回、東京医科歯科大学では、潰瘍性大腸炎の患者さん自身から採取した少量の組織から樹立し、大量のオルガノイドに増やした上で内視鏡を使って移植する技術を開発しました。
オルガノイド「ミニ臓器」
オルガノイドは「ミニ臓器」とも呼ばれ、体外で3次元構造を持ちあたかも小さな臓器のような構造と機能を備えた細胞の集合体です。腸上皮オルガノイドは腸上皮幹細胞を含み、適切な環境と操作の下で大量・長期に増やすことが可能です。
今後に期待‼ 他の消化管難病にも
オルガノイド医療は、人の体に本来備わっている幹細胞(体性幹細胞)を利用するものです。今回、世界初の実施例により、さまざまな臓器におけるオルガノイド医療の実用化に道を拓く第一歩となる成果を達成しました。難治性潰瘍を伴う他の消化管難病 (クローン病等)への応用・展開が期待できます。
東京医科歯科大学プレスリリース「「世界初、自家腸上皮オルガノイドを潰瘍性大腸炎患者に移植」
https://www.tmd.ac.jp/press-release/20220707-1/(最終アクセス 2022年7月12日)